昭和のオヤジの代表的な楽しみであるが、ビール飲みながらナマ野球観て徒然にグダグダ…をモチーフに今までは「ビアのみ野球大放談」を書いていた。その場に居合わせた人しか分からないマスコミが取り上げないような試合の機微をかなりマニアックに書いていたのだが、お陰様で現場主義の野球好きには好評をいただいている。
さてさて今回からは私の本職?である時評を書いていこうと決めた。
文章は少しクドくなるが、読んでもらえば分かりやすいものにします。
栄えある第1回は西川の加入について取り上げる。
まずは西川の基本情報から。
西川遥輝 にしかわはるき Kー
1992年4月16日生 29歳
身長181㎝ 体重79㎏ 公表
外野手 右投左打
2010年智辯学園和歌山高校からドラフト2位でファイターズ入団。
2012年から頭角を現し、主に二塁手として活躍。2013年開幕スタメン。自慢の俊足を武器に盗塁の数を順調に増やしていく。
2014年頃から外野手の出場が増える。この年自身初の盗塁王獲得。
2015年から1番左翼手に定着。
2018年から中堅手が多くなる。
2020年オフにポスティング制度でのメジャーリーグ移籍を目指すも獲得球団がないため残留。
2021年4度目の盗塁王を獲得するもオフにノーテンダーFAとなりイーグルスと契約。大幅減給。
どうしてノーテンダーなのか。今年は他にも2人いたからファイターズのチーム事情が関係していることは間違いない。当時相当話題になったが、所詮首脳陣の本音は分からない。21年は確かに打率などは低迷していた。また入団の年に痛めた肩が治癒していないため送球に難がある、左翼しか守れないなど。だがもっともらしく言われているのは悪キャラ説ですね。どうも特に下の人間に対して厳しい言動が多い。上の言うことをきかない。ポスティング制度での渡米もひどく強引なやり方でそれがまだ尾を引いているなどなど。
しかしながらこのクラスの選手を代償なしで獲得できるのは他球団にとってはかなりお得な感じで、外野陣が比較的充実しているイーグルスがしかも破格で契約する。
なんたって現役の盗塁王でまだ29歳である。キングは4回目である。そして西川の凄いのは盗塁成功率がひどく高いこと。足が速いのみならず相手バッテリーの隙をつく技術が非常に高いことは今まで目の当たりにしてきた。
イーグルスの現在一番の課題は機動力なのは明白で、盗塁数がやたら少ないし盗塁どころか走ることがどうもイマイチな人が多い。そこに西川の加入で盗塁数は勿論増え、下手すると昨年のイーグルス全体の盗塁くらい一人でしてしまうような勢いである。機動力での期待はかなり大きい。
その付帯効果として昨シーズン苦労した1番バッターが固定できる。昨年は小深田が当初1番当確と思われたが打率出塁率ともに低く、後半は定位置を逃したことは記憶に新しい。先頭打者の出塁率は初回の得点率に直結しているから、貧打イーグルスと言われ昨年3位に甘んじた大きな理由の1つといっても過言ではない。
また4月8日現在で貧打イーグルス打線において西川は打棒も好調であり、高出塁率、高得点率に繫がることは想像に難くない。もともと長打力があることも得点力に大きく寄与する。
かたや弱肩と言われた守備であるが、打球に対する俊敏な反応性と俊足のため守備範囲が広いのは特筆すべきで現在のイーグルスではずば抜けている。一方イーグルスで守備が上手いといわれる辰巳などは肩は強いが打球に対する一歩目がとても遅くファインプレーに見える好捕は出足の悪さ故である。西川の肩については確かに多くは期待できないが彼が入ることで相手のヒットゾーンが非常に狭くなると考えられ、守備力全体としてはプラスであろう。
以上西川加入のメリットをまとえると
1. 格安大型補強になった
2. 機動力攻撃力が格段に上がり、得点力アップが期待できる
3. 外野守備も向上する
といったところであろう。
さていいとこずくめの西川加入のように書いたが、結論から申し上げればデメリットの方が大きいと考えている。
またまた…と言うなかれ聞いてください。
よく思い出してほしい、この文章の出だし部分を。この人ノーテンダーFAなんである。ファイターズだってバカではないのだよ。一番の問題は悪キャラだ。
野球は集団競技であり、これは攻撃力守備力機動力の3つの他に共同力というかいわゆるチームワークがある。日本の伝統「和」の力である。これが今年は数段落ちている節がある。
西川は孤高の人なのである。悪キャラというのは少し言い過ぎであろうと思うが、どちらかというと自分の能力を自分で高めるタイプだ。
彼自身が初めてのトレード経験で、しかもこのコロナ禍状況で新しいチームに溶け込むにはまだまだ時間がかかることは十分想定される。つまり浮いている存在なんである。
それは西川が適時打を放った時などの味方の喜ぶ反応の低さや、守備でも声がけがお互いによくできていないこと、山崎あたりの後輩にあたる選手がまるで膾を吹くような接し方をしているのをみるとよくわかる。
イーグルスは良くも悪くも和のチームであったのである。むしろ和に重きを置きすぎた結果、みんなで貧打みたいなことが日常的だ。貧打問題などのチーム全体の話は後日他稿に譲るが、チーム全体で考えた場合孤高の西川は悪い方向に作用する可能性が高い。
典型的にそのデメリットが表れているのは先出の山崎である。どうも石井監督の頭の中には「よーし、一番西川、二番山崎だ」という固定観念が硬―くデキモノのように大きくなっているようだ。昨年後半の山崎の活躍は目に見張るものがあった。茂木栄五郎のフルスイングは彼の代名詞だが、それ以上といってもよい自由奔放なフルスイングで長打力もあり足が速く、守備は二遊間の名手で何とも頼もしい人がでてきたもんだと思った。だから石井監督の腫瘍はできるべくしてできたものなんだけど、どうも一番西川の存在は二番山崎のバットのスイング速度をかなり落とすんだよね。西川の打棒が好調で盗塁すればするほど委縮する山崎。 今年はフルスイングが全く見られなくなり、当てるだけの打撃が目立つ。山崎はもともと一番タイプなのである。しかも先輩西川を立てる礼儀正しい男である。守備でも左翼線浅いレフトフライが飛ぶとレフトの西川とショート山崎が交錯する守備位置だ。西川がフライを取ると丁寧に頭を下げてボールをもらう山崎。それでは彼は活躍できない人になっている。山崎以外の後輩も西川イコール腫れもの扱いになってしまった。これはチーム戦力にどれくらい影響を与えているかはなかなか評価がむずかしいものだが、山崎の打棒が全く上がってこないのが分かりやすいバロメータになっているようだ。見えにくいところで他の選手も影響があるだろう。西川は自分にも他人にも厳しく「みえる」のである。
もう1つは、外野守備体制の問題である。彼が左翼に入ると、島内が右翼に移動する。中堅は辰巳か田中和であろう。島内は昨年打点王で今年も押しも押されぬ4番であり、今一番バットが振れている貴重な打撃での主戦力である。でも実は数年前の大けがやその後も繰り返すけがにより下半身特に左ひざ右足首が致命的に悪い。右翼は左翼に比べて守備の負担が大きいため、島内の下肢体力がもつかどうか。それが打力に影響しないとよいが。さらには再度のけがで戦線脱落が無ければよいが。指名打者にしてしまうのもよいかと思いますが、新外国人や浅村あたりのことを考えると守備に就かせたいところだ。そして新外国人は外野に入るなら右翼しかない。もしくはDHか1塁手だが和田を使うとなると、決してレベル高い争いではないのだが頭が痛い。そして西川は肩が弱いのである。外野守備力は総じて上がるのだが、死角が多いことを肝に銘じるべきであろう。
そして西川1番固定の打線問題が出てくる。先ほど1番固定できてメリット大きいと書いたが、弊害がでてくることもこれまた事実である。例の山崎のしょんぼり問題。走れて出塁率が高い西川を1番に固定できて嬉しいのは確かだが、忘れてはいけないイーグルスには山崎という素晴らしい1番がいたことを。今年は西川がいるから2番固定になっちゃったが、これは冷静に考えると1番山崎、2番西川がベストではないかなあと思います。西川は以前2番の経験が豊富で攻撃的で走れる2番は十分にやれるし、3番浅村につなぐには現在の攻撃野球ではうるさい存在の2番になりうる。山崎は1番で自由を取り戻せる!1番西川は不動ではないのである。石井さん気づかないかなあ。