イーグルス時評5 #2022.06.20
番外編・外国人野手列伝
ーichibanワクワクさせてくれたのは誰だ?-

今シーズンペナントレースは早くもイーグルス60試合を消化。交流戦スワローズ優勝でセリーグでは独走態勢に入り、タイガース2位で大きく巻き返した。この2チームについてはセの勢いを感じたがラスト3チームはセが独占。差は縮まったがやはりパリーグチーム優位の結果となった。イーグルスは近年キーポイントである交流戦大丈夫?という展開から、何とか交流戦勝率5割を維持し改めてパリーグ首位を奪取した。しかしながら相変わらずの貧打問題が大きく影響し、本当に強いのかイーグルスという疑問がどうしても首をもたげるシーズンである。とにかく打てない。点が取れない。何せ試合がつまらない。プロなんだからファンを楽しませる試合をしてほしいものだ。ひどい得点力不足に悩まされているが、浅村は現在打点トップ通過。それ以外の打者が点取れない事態で、大きな原因の1つが外国人打者の長打不足である。長打不足というかろくに出場すらしていないのだから、勿論HR数や打点が伸びる訳もない。毎年この時期に外国人野手の総評をするのが常であるが今年は書く内容に乏しい。んでもって以前はワクワクさせてくれた人いたよねえということで歴代外国人で日本人にない魅力をたくさん放っていた人たちの代表格の話をしよう。

まず日本プロ野球界において外国人野手を入団させる意図をはっきりさせておこう。通常は下記のものだ。

  1. ① 日本人野手よりパワフルであるので、打撃において即戦力として長打力特にHRによる得点力アップを期待

  2. ② 走攻守において現在在籍する野手より優れている。つまり外国人である必要はないが、現状で獲得できる優秀な即戦力になり得ることを期待。しかし主に打撃を優先していることが多いが①と区別すると長打力がなくても中距離打者として優れていることを意味する。

  3. ③ 主に若手選手で現在まだ戦力とするには乏しいが、育成することにより数年後にはいずれ主戦力になることを期待。そして主にはやはり打撃力を期待している。

くらいでしょうね。そして①から③では圧倒的に①の期待で外国人野手を獲得してきた経緯がある。以上を踏まえて外国人野手の魅力は何ぞや?と問えば私見では「日本人にはないスケールの大きさで特にパワフルな打撃で我々日本人をわくわくさせてくれること」と定義したい。時に守備が下手くそとかどん足とか酷評される外国人がいるが、プロであるからしてそんなのあまり関係なくむしろご愛嬌であり、通常誰もができそうにない強烈な打球をかっ飛ばせればそれで充分魅力的である。

それではイーグルス創成時代から順に私がわくわくさせられた愛すべき外国人達を述べよう。おっとこの文章はイーグルス時評なのだからその前に一応今年の外国人について分析したい。

12 ホセ マルモレホス

まず登録名から気に入らないのだが「マルホレホス」そのままである。この名前を覚えてくれたファンは何人いたのかなあ。私は親しみを込めて「マルちゃん」と呼んでいる。

昨年3Aでは打率.338HR26OPS1.111と圧倒的な存在感を示し、今年からイーグルスに。ただ昨年メジャー昇格後のマリナーズではほとんど活躍できていない。

開幕当初は変化球を観ることができるので日本でも活躍できるかもと評価していたのだが、どうもボールの見極めができるというよりは打てない球には手を出さないだけで当たれば一発のパワーはあるのだが、まず単純に当たることが少なすぎる。現在打率.206HR6ではまあちょっと難しい。あとはこれは個人の嗜好レベルだが、HRが結構芯を喰ってなくても入っちゃうので弾丸ライナーでもなくアートと言われる大飛球でもなくどうも美しくないのも魅力を感じない。ガツンと芯で打った本人が100点というような当たりを観てみたいものだ。

42 クリス ギッテンス

昨年のカスティーヨに続き初出場の試合で故障退場した。調整不足か張り切りすぎか、はたまた不可避な怪我なのかよく分からないがこの手の人はスポーツ選手に限らず仕事運がない人と烙印を押したくなるのである。それ以上の評価の仕様はなく、現在の日本プロ野球のシステムでは解雇になる確率が高い。イーグルスに生き残る可能性因子としては28歳と若いこと。ある程度育成していくつもりがあったのでしょうからね。

以上2選手である。どちらも期待はあまりしない方がよく、イーグルス貧打線の救世主とはなり得ない。本来浅村に続くHRが打てる打者を期待しての獲得だから私は更なる外国人補強がよいと思う。少なくとも国内から補強するよりは難しくないであろう。ロビンソンカノあたり捕まえてくれば少しは盛り上がるよ。もう1つはジャイアンツのウィーラーを取り戻すのがよいかも。

さてさて。過去の記憶に残る外国人野手を並べてみよう。

55 リック ショート 2006-2009年 “リックショート*3!”

” 2005年イーグルス立ち上げの翌年、ライオンズをクビになったホセフェルナンデスとともに入団する。ホセはHRの魅力はあるが大味でとにかくスライダーや縦の変化球が打てないのだが、リックはまっすぐは勿論変化球特にスライダー打ちを得意にしていたと思う。それ以外もフォークをバックスクリーンにHRしたりしていて変化球の対応力は満点。2004年マリンズに在籍していた時も打率.304と日本で言うシュアな打撃であったがHR12本と少ないことが気に入らなかったマリンズ首脳陣が退団させた。イーグルス時代は打率.314-.330-.332-.255で最終年は故障のための不振であるから省けば素晴らしい打率だ。首位打者1回、打率2位1回、打率3位1回ですよ。その割にはイーグルスでも首脳陣評価はあまり高くない感じであった。確かにHRは少ないが上記の入団させる条件②を十分に満たしている。スタンドインはしないけど二塁打はいつもパ上位の多さで鋭いライナー性の当たりを連発し数多くわくわくさせられた。この頃楽天球場はフィールドが今より大分広かったもんね。故障を治してもう1年観たかった外国人であったが2009年時点で38歳、引退を考えていた。またユーティリティープレーヤーで左翼の他内野を遊撃手以外全て守れる。ショートだがショートは守れないと揶揄された。そして守備も堅実で上手い。2008年は左翼手でベストナインに選出されるほどだ。練習好きで生真面目、誠実。現メジャーリーグダイヤモンドバックスの打撃コーチ。飯田哲也引退試合での「飯田さん、頑張るから・・」は世界を感涙させた。2006年田中将大の新人王、2007年の岩隈21勝で六冠達成などは打線でのリックの貢献が非常に大きいと考えている

5 フェルナンド セギノール 2008-2009年 “セギノール!連呼”

イーグルス史上初の超日本人クラス外国人と言えばセギノールだ。イーグルス所属前のファイターズ時代が全盛期であったが、当時山崎武以外長打力に乏しかった楽天打線で身長193cm体重90kgの大きな身体をフルに使い爆発的パワーで強大HRを連発した。2008年は8月からの加入であったが、39試合で打率.324HR13打点40と大暴れ。翌2009年は持病の腰痛を悪化させて本来の打撃はできなくなった。しかし特に生で観た時のそのスケールの大きなHRはファンを強く惹きつけたことは間違いない。左右打でどちらの打席でも長打力があり左右でのHR記録は枚挙にいとまがない。欲を言えば全盛期の彼を生で観たかった。

25 アンドリュー ジョーンズ 2013-2014年 “AJ!連呼”

イーグルスの球団史において、2012年に立花陽三が球団社長に就任し、日米問わず主にスカウト活動を開始したことは大転換点である。就任直後に得意の英語力を武器に渡米しニューヨークヤンキースに太いコネクションを作り秋季キャンプからアンドリュー、マギーを引っ張り、その後ウィラーやユーキリスなどを次々と獲得した。また初年度は斎藤隆投手をも故郷仙台のイーグルスへ入団させることに成功する。従来の日本プロ野球界の外国人獲得法と明らかに違うこの手法は当時他の球団編成スカウト部門に大きな風穴を開けた。また2013年ドラフト会議の1位抽選で5球団競合の松井裕樹を引き当てている。

さて、AJことアンドリューはメジャーリーグ通算本塁打434、ゴールドグラブ賞10回、オールスター選出5回のスーパースターである。アトランタブレーブス黄金期で14期連続地区優勝の後期に主軸を務めた走攻守そろった大スラッガー。このレベルの人が日本にしかも仙台に来るとは思ってもいなかった。イーグルス入団後は既に全盛期を過ぎていたわけであるが4番に居座ると対戦投手はビビりまくり四球を連発した。2年連続四球王。2年連続出塁率.390超。打率は低いがHRは2シーズン計50本を記録、得点力アップに大きく貢献した。また2013年は5番にマギーが座り、アンドリュー四球その後マギーが打点というケースが非常に多く、強打者2人は相加相乗的な攻撃力になることを実証した形だ。AMアベックホーマーは圧巻で、米国風にいえば観客全員スタンディングオベーション、日本風にいえばよっ千両役者!であったことが今となっては非常に懐かしい。この2人が2013年のイーグルス日本一の立役者であることは誰も異論はないであろう。またとても魅力的なのはアンドリューのHRだ。打球が非常に速いので打った瞬間に入るというのはこのことだ。しかもストレート弾道で緩やかに伸びてセンターから左方向外野席まで一直線に飛んで行く。次のマギーはどちらかというとドライブがかかったライナーで左翼超えのHRが多かったので対照的であった。これくらい打ってくれると野球観戦は楽しいね、石井さん。

3 ケーシー マギー 2013年 “マギー!連呼”

上述アンドリューとの主軸でわくわくさせてくれたもう一人。1年しか在籍しなかったが、本物の現役メジャーリーガーとはこういうものだということをファンに知らしめた。実際には打率、HRともアンドリューを超えていて数字的にはまだ若かったマギーがかっ飛ばしていた場面が多い。力強いドライブのかかったライナーで二塁打も多かった。息子さんの病気の件で帰国したが日本に戻るならイーグルスにと語っていた律義さが日本人のようであった。

他にもアマダ―、ペゲーロ、ブラッシュなどは素晴らしいHRで魅了されることが多かった。またイーグルスでは活躍できなかったが立花社長の尽力でメジャーリーグの大スターである晩年のユーキリス、ゴームスが入団して一時ながらわくわくさせてくれた。ウィーラーは仙台にそしてイーグルスに馴染んで副主将に選ばれるほどチームやファンに溶け込み愛された稀有な外国人だ。繰り返すが彼は戻ってきてほしいなあ。