野手に続いて投手陣の総括をしよう。先発陣では二桁勝利投手が則本だけ。しかもカツカツの10勝止まりだ。500勝カルテット+ぎりぎり新人王なれなかった2年目早川、社会人での実績十分で昨年10勝の瀧中などの先発陣は十二球団一と評されたが・・・。リリーフは更にコマ数豊富だしセットアッパーから抑えまで左右取り交ぜ十分な投手力を誇ったはず。勿論散々言ってきたように貧打線の責任は非常に重大で、特に今年はキーポイントでの適時打にひどく乏しい感じがしたのは私だけではないだろう。しかしながら投手陣にも大きな問題を抱えているのは間違いない事実である。その証を立てていくのが本章の目的の一つである。
それでも栄えある投手陣の1位は!
1 まつい ゆうき
おそらくNPBでデビューから長期に渡り最も安定したクローザー。普通は本格派でこれだけ長くクローザーやっていると肩がイカれてくるのだが、そういった様子は微塵もない強靭なフィジカルと救援失敗後に全く挫けていないメンタルの強さを併せ持つ。
これは2022年の総括だが、基本的知識として今までの彼のプロの投手としての歴史を少しひも解いておこう。
ルーキーイヤーである2014年はお試し企画的に先発は勿論いろいろな場面でリリーフをしていたが、どうもリリーフ向き、しかもまっすぐ150km超の球威だけでなく多彩な変化球もあり三振を量産できるとの計算から2015年から本格的にクローザーを任され3年連続30セーブ以上の成績を残す。1イニング当たりの平均三振数は1.42→1.20→1.18と、クローザーとしての重要な資質である三振を獲れる投手である。2018年は故障もしくは結婚前の熱愛のせいとも言われたが不振な成績であった。2020年は先発に戻されて同様にリリーフでの芳しい成績は残せなかったが、それ以外の年は全てクローザーとして十分な成績を残してきた。いやむしろ更なる進化を遂げている。いわゆるノーコンだの松井劇場などという輩は松井の本質的な凄さを全く理解していないか、十分理解していて強大な愛情からそのように揶揄するのかどちらかだ。まず1イニング平均四球数は直近の2年では0.49→0.37である。クローザーとしてはむしろ四球は少ない。奪三振数は1.37→1.60と今年2022年は特に高い数字だ。
松井が三振を獲れるのは、
① 体幹から左肩甲骨周辺(おそらく右肩もだろうが)の筋肉が柔軟性が高いこと、筋力が強靭であること。そのためいわゆる「デンデン太鼓投球」で左上肢が体幹よりかなり遅れて出てくるため、打者から球の出所が視認しにくい。したがって球種はおろかまっすぐか変化球かの区別すらつかない。したがってどの球種でもツラれてバットを振ってしまう。
② 特にいわゆる縦スラは秀逸でまっすぐと同じ軌道から投げられるため打者はタイミングが取り難く空振りすることが多い。それ以外にもチェンジアップ、カーブ、カットボールと多くの変化球を投げるため球種の見極めが難しくまっすぐも150km超で更には左投手であり手が出ないことも多い。
③ ランナーが出た時などのクイックなどの投球術に長けていて、モーションでタイミングを外してくることがある。
などの理由からである。
2022年シーズンはキャリア2位の32Sでセーブ王を獲得し、防御率1.92と抜群の安定感を誇る。2021年防御率0.63に引き続き突出した数字である。日本を代表する抑えのエースとして実績を重ねて威風堂々たる投手になった。OBの山村元投手辺りは「とにかく皆で松井に繋げば勝てる」と解説していて周囲の信頼度は絶対的になってきた。現在イーグルスの勝利は松井なしには語れないのだ。
頑張れ!まつい
11 きし たかゆき
想定以上に頑張ったからという精神論ではないよ。先発投手の中で特に500勝カルテットで、シーズン通して最も安定した投球で先発投手の役割を十二分に果たし、先発ローテーションを最も徹底して守り抜いたからだ。先発ローテーションを外れたのは試合のスケジュールによる調整だけで他はきっちり中6日ずつで先発をこなし、22試合登板QS率は68%で他の3人と比較して最高値である。WHIP1.02防御率3.19もトップだ。奪三振率は7.53で則本の7.49を凌ぎやはり1位である。文句なしと言いたいところだが・・・。
やはり8勝どまりに終わったことはどうしても悔やまれる。そして僅かながら規定投球回に届かなかったことも。QSがいいから貧打線のせいではないかと擁護する向きもあるだろうが、ここは勝負の世界。勝ち星数は今の定義である以上先発投手の要であることは間違いない。規定投球回数については最近の先発-中継ぎ-抑えの分担制の影響は多分にあることは重々承知している。今年は規定投球回を超えたのはパリーグでは9投手のみであったから、プロ野球全体でちょっと見直しを検討してもよい項目になってきた。ただ彼にとっては今年が回数クリアできる最後の年であったかもしれなくて、クリアして欲しかったという私的願望が含まれる。
私の想定を超えた中6日でのローテーション死守以外は、以前時評で書いた通りであるがもしかすると中9日くらいで投げさせたら10勝できたのでは?とさえ思う。今年観てきて大体80-90球程度が交代タイミングになっていた。しかし投球間隔を空けるなら100球いけて、その分味方打線が点を取ってくれるなら十分二桁勝利の可能性はある。来年はそれがよいと思うが、岸、周辺の心境はいかに?
頑張れ!きし
14 のりもと たかひろ
詳しくは時評で述べた通りでそれ以上につけ加えることはあまりない。敢えて言うなら結局三振が獲れないことにより彼は投球リズムを崩してしまうタイプで、三振を狙うと普通は球数が増えて守備の時間が多くなりリズムが悪くなる投手が多い中、全く逆である。球数が増えてもそれを補うに十分なスタミナがある投手であったし、何よりも強靭な自信を獲得していって投球にそれが現れるのが則本であった。QS率で47%はちょっと低いしそれでも10勝したところが彼の凄いところだと思っているが、まだまだ三振を奪いに行ってよいのですよと言いたい。我々はそれを観たいのだから。
頑張れ!のりもと
18 たなか まさひろ
昨年はかなり不運な面があったと想っていたが、今年二桁勝てないとなるとちょっと厳しい。昨年から気になっていた利き腕である右上肢の硬さは解消されずその分上半身の開きが早くなっている。打者としてはタイミングが取りやすくなったし、何しろ球威が実測値ほどないのであろうバットの芯で捉えられることが多い。私的には不調時はローテを外していく勇気を石井さんが持ってほしい。
頑張れ!まーくん
43 そん ちゃあほう
今年は出遅れたが、それでもH20は十分な成績で個人的にもっともっと頑張ってやはり先発に回ってほしい本格右腕である。
頑張れ!そん
21 はやかわ たかひさ
敢えて特にコメントなし。来年に大いに期待する。
頑張れ!はやかわ
58 からしま わたる
32歳となり、いつしかベテランの領域に入ってしまった。それでも今季は復活し先発投手陣がなかなか勝てないところで6勝を挙げたのは大いに評価したいところだ。相変わらず遅いまっすぐとキレのある変化球で調子がよいと相手チーム打線に付け入るスキを全く与えないほどの好投をする。シーズン通して活躍できないところが以前からの欠点であるが、まだまだ彼の存在価値は大きいのだ。
頑張れ!からしま
62 にしぐち なおと
今年は61試合に登板してH30はとてつもない数字だ。しかしながら私はこの人どうしても先発に回したいと思う。もともと絶対的な決め球があるわけではないが、投球全体を纏めてくるタイプで長いイニングを投げることができる。中継ぎは多数候補がいる中で大分慣れてきたところのこの好成績であるが、来季は先発ローテは足りないし試合数増えれば活躍できると踏んでいる。
頑張れ!にしぐち
20 あんらく ともひろ
何せ好不調の波が非常に激しく、昨年の実績からせっかくセットアッパーを任せられると信頼を寄せていると一球目からHB5m手前のワンバンを投げたりして、なんじゃそりゃあという投球をする。ああ今日は全くダメだとすぐ分かる。疲労を蓄積しやすく、ある程度投げ続けると身体的切れがなくなると自分で思い込むことが原因のように思う。身体は投手陣で一番立派に見えるのだが。
頑張れ!あんらく
28 さかい ともひと
38 ゆげ はやと
ちょっと早いがピークを越えてしまった感じがある。どちらもワンポイントくらいがよさそう。理由はさておきアバウトでは石橋もここにいれといてよい。
49 にしがき まさや
56 すずき そら
私が大いに期待する左右の先発候補。西垣についてはまっすぐに威力があり抑えでもよいかもしれないがどちらも長いイニングいける。
72 みやもり さとし
こちらは明らかに抑え候補で球離れの非常に遅いまっすぐが威力十分だ。ポスト松井はこの人でいきましょう。
46 ふじひら しょうま
57 たきなか りょうた
どちらも再起を狙う先発候補だが、とても厳しい状況だ。ここに今年は投げていない塩見も入る。